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埼玉県越谷市 社会保険労務士・行政書士 宮崎事務所です。ご相談はお気軽にどうぞ。


DVとは

 DVとはドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)の略です。そのまま日本語にすれば「家庭内暴力」となりますが、日本で「家庭内暴力」といえば子供が親に暴力を振るうというイメージが強いでしょう。そこで、いわゆる家庭内暴力と区別するために「DV」という単語がそのまま使われています。

 DV防止法によると、DVとは「配偶者(内縁含む)からの身体に対する不法な攻撃であって、生命又は身体に危害を及ぼすもの」と定義されています。ここでいう不法な攻撃とは、直接的な暴力のことだけではありません。いくつか例を挙げてみると、生活費を渡さないなどの経済的暴力、性行為の強要などの性的暴力、悪口を言う・大声で脅かすなどの精神的暴力、他人との接触を禁止するなどの社会的暴力などが該当します。要するに、被害者がケガをしたとかしないとかの問題ではなく、被害者が「怖い」と思えばそれはDVなのです。
 
 最近では肉体的な暴力ではなく、精神的に攻撃するモラルハラスメント(モラハラ)も問題になっています。モラハラもDVと同様に離婚理由となりますが、DVによる怪我の診断書など証拠を集めにくいことがあります。少なくとも、相手の発言内容や行動などを、その都度記録しておくことをおすすめします。
 
 現在、配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は年間7万件を越え、その被害者の99%が女性です。これは被害者が相談に行ったり、第三者からの通報などで認知された件数ですから、誰にも相談もできずに苦しんでいる深刻なDV被害者がまだまだいることを忘れてはいけません。
 更に内閣府の調査によると、配偶者などから「身体的暴力」「心理的攻撃」「性的強要」のうち1つでも受けたことのある女性は約1/3に上るという結果が出ました。
 DVはもはや他人事ではすまないものになっているのです。




なぜDV被害者は逃げられないか?

 DVを他人事として捉えている人のなかには、「被害者が逃げないのが悪い」などと心無いことを言う人がいます。しかし、現実はそうではありません。
 DVにはサイクル(周期)があります。このDVサイクルを簡単に説明すると、次の3つから構成されています。
蓄積期
 お金のこと、子どものこと、その他のさまざまな要因について加害者がストレスを溜めている期間で、段々と緊張が高まってきます。この間、加害者は被害者に対する否定的な点を集めて溜め込んでいます。また、物を投げたり、大きな声を出したり、小さな暴力を振るったりします。
 被害者は加害者の暴力がエスカレートしないようにすることに精一杯になり、他のことが考えられなくなることがあります。

②爆発期
 ストレスが限界まで溜まると、どんな小さなことでもDVのきっかけとなり、突然暴力が始まります。いつ爆発するかを予測するのは難しいのですが、このような関係が長い間続いていると、相手の雰囲気から爆発が近づいていることがわかるようになる人もいます。
 爆発が終わると、加害者は「ついカッとなってしまった」「反省している」などと言い訳をし、自分の行為を正当化しようとします。
 被害者は肉体的に深刻な被害を受けるだけではなく、うつ、不眠、摂食障害などに陥ることもあります。爆発が終わったあとの数日間、被害者は虚脱状態となり、助けを求める気力もなくなってしまうことも少なくありません。

③安定期(ハネムーン期)
 暴力でストレスが一時的に発散され、急に優しくなったり、謝罪したり、プレゼントをしたりします。加害者は短期間でも親切にしたり、優しく振舞うことで自分を良い人・良い夫だと思い込んでいます。また、被害者も「今度は変わってくれるはず」[暴力さえなければ良い人だ」「私が怒らせなければいい」という甘い希望を持つようになります。そしてDV関係が長くなれば、それだけ安定期は短くなっていきます。
 この安定期があることによって、被害者がいったん加害者から逃げ出しても、再びこの時期の彼の優しさを思い出して、加害者のもとに戻ってしまうこともあります。 

 DV関係に陥ると、この3つを延々と繰り返します。そしてその周期は徐々に短くなり、暴力はエスカレートしていきます。このDVサイクルによって、女性は逃げるチャンスを失ったり、自分が悪いと思い込んだり、いつかは収まると期待したり、無力感に陥ったりすることで、この関係から抜け出せなくなってしまうのです。

 また、加害者の多くは最初から暴力を振るったりはしません。付き合い当初・結婚当初は優しく良い恋人・夫だと思われています。女性は「良い人に会えた」「幸せな結婚をした」ということを友人・親などに自慢することもあるでしょう。その相手が暴力を振るう最低の男だと気付いたときに、そのことを恥ずかしいと思い、簡単には相談できないことも多いのです。更に、相手の暴力は自分に原因があるのではないかと考えてしまうこともあります。 


DVの兆候は

 多くのDV加害者は、DVを始める前に前兆となるサインを発しています。次のようなサインが表れたら、DVの危険が迫っているかも知れません。

1.以前の恋人・妻を見下す
 過去に付き合っていた女性がいかにひどい女性であるかを話す男性は危険です。特に自分が虐待(心理的・身体的問わず)の被害者だと言い張る男性は、過去にDV行為をしていた確率が高いです。

2.相手の女性(妻・恋人など)を見下す
 他人の前で女性をバカにするような発言をしたり、嫌味を言う人にも注意です。このような言動が続くと、女性は反抗するでしょう。それでも態度を変えないようであれば、DVが始まる前兆かもしれません。1と同様に女性を見下したり、人格を尊重しない行動はDVの根本といってもいいでしょう。

3.相手をコントロールしようとする
 コントロールは些細なことから始まります。服装や髪型にいちいち口を出したり、仕事や友人関係に文句をつけたりします。それがエスカレートしていくと細かいことにも口を出すようになり、命令に従わないと不機嫌になったり、不満を言うようになり、DVへと発展していく可能性があります。

4.相手の女性を束縛する
 異常な嫉妬心はDV加害者の重要なポイントです。しつこい電話やメールは愛情ではありません。相手を自分のモノとして所有したいだけです。また、最近では相手の携帯電話をチェックし、男性のアドレスを勝手に消したりするケースも増えています。その男性が仕事の相手であろうが、兄弟であろうが加害者には関係ありません。

5.すべてを他人のせいにする
 自分の失敗や不満を全て他人のせいにする男性は、いつかその怒りを女性にぶつけるようになります。

6.怒ったときに女性を威嚇する
 怒ったときに、直接殴ったり・蹴ったりはしなくても女性を威圧するような態度を取る男性はかなり危険です。物を投げる、怒鳴る、言葉で脅迫する、非常に顔を近づけるなどの行為をするときは、すぐに逃げ出すべきです。「もう少し様子をみよう」「すぐに機嫌は直るから」というのは、最悪の選択です。時間が経つほどに逃げ出すのは難しくなります。

7.セックスを強要する
 恋人ならあるいは夫婦なら、いつでもセックスをさせて当たり前という男性も危険です。「セックスさせなければ浮気する」と脅しを使って、相手に「捨てられるかもしれない」という不安を与えることで相手を支配しようとします。
 同様に、別れを切り出すと「死んでやる」と脅す加害者もいますが、ほぼ間違いなく口だけの脅しです。本当に自殺する加害者は、まずいません。反対に「別れるなら殺す」と脅してくる加害者は危険度が高いです。

 このような兆候が表れたら注意が必要です。暴力行為や粗暴な態度は「男らしい」のとは違うのです。なお、このような変化があったとき、DV加害者は変わったのは自分ではなく相手の女性だと考えています。自分が間違っているという考えは持っていません。「話せばわかる」は通用しません。


DVの被害にあったら

 もしも自分がDVの被害にあっているのなら、1人で悩んでいてはダメです。また、もし周囲に被害にあっている人がいたら、見ないフリをするのはやめましょう。すぐに相談機関へ連絡してください。被害が深刻であれば、すぐに警察へ通報してください。

 被害女性の多くは、自分が被害者であることを認めようとはしません。それは、メンツやプライド、加害者への愛着・期待・恐怖など、いろいろな理由があります。

 DVの被害にあったり、予兆がみられるようになったとき、ほとんどの女性が「少し様子をみよう」という考えを持ちます。「もっとひどくなったら別れよう」と考えることが多いようですが、これは危険です。一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど、逃げ出すことは難しくなっていきます。なぜなら、①DVの時間・回数とともに、女性の気力・体力は無くなっていく ②加害者が被害者の友人・家族などに悪影響を与えていると、いざというときに被害者が助けを求められなくなる ③DVサイクルを続けているうちに「トラウマ性結びつき」が生まれ、相手から離れられなくなる という状況に陥るのです。

まずは相談を

 DV被害から抜け出すには、まずは相談することから全てが始まります。被害を受けている女性の場合にはスムーズにいくと思いますが、問題なのは被害者だという実感がない女性です。こういったケースでは、周りの誰かが手を差し伸べてあげなければ何も始まりません。
 相談機関として、警察や配偶者暴力相談支援センターなどがあります。配偶者暴力相談支援センターは都道府県単位で設置されています。また、市役所などで相談窓口を設置している自治体もあります。

 配偶者暴力相談支援センター | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

 もし周りに少しでもあやしいと感じる人がいたら、すぐに相談することです。証拠がない、確信が持てないという場合でも構いません。被害者の生命が危険に晒されているかも知れないのですから、迷っている場合ではありません。




DVの保護命令

 保護命令とは、夫(元の夫も含む)であるDV加害者に対し、共同住居からの退去命令や、被害者の現住居や勤務先付近などの徘徊禁止とつきまとい禁止を命じるものです。被害者と加害者との間に距離を置き、暴力を防ぐための措置です。加害者が元の夫である場合に保護命令を申し立てることができるのは、婚姻期間中から暴力の被害にあっていた場合に限ります。

 保護命令には違反した場合、罰則はありますが加害者の前科記録となるわけではありません。
 保護命令を得るためには、①加害者が配偶者、元の配偶者、生活の拠点を同じくする交際相手であること ②過去に身体的暴力があり、保護命令なしでは被害者が重大な危害を被る危険が大きいこと ③事前に警察か配偶者暴力相談支援センターに相談することなどが必要です。
 申立は、申立人又は相手方(加害者)の住所地を管轄する地方裁判所に対して行います。通常は申立があると、口頭弁論又は審尋を経て決定がなされます。所要日数は10日から14日程度が多いようです。
 接近禁止命令は加害者が被害者に近づくだけで逮捕される、相手にとっては非常に厳しい命令ですから、実際に保護命令を受けるためには厳しい要件が定められています。できる限りの証拠を集めて準備しましょう。
※保護命令の申立てを準備していることを知られると、暴力行為や証拠隠滅などの可能性もありますから、できる限り知られないように気を付けた方がいいでしょう。

 保護命令の内容は以下のようになります。
1.接近禁止命令
 地方裁判所が加害者に対し、被害者の身辺(住居、職場など)へのつきまといと徘徊を禁止するものです。一定の場合、同居している子供への接近禁止も可能です。効力は6ヶ月間で、再度の申立もできます。ただし、再度の申立は認められないケースが少なくありません。

2.退去命令
 加害者に対して、被害者との共同住居からの退去を命じるもので、有効期間は2ヶ月です。退去命令は、申立の時点で、加害者と被害者が同居している場合に限って申し立てることができます。再度の申立も可能ですが、実際には被害者が転居するための準備期間と考えておいたほうがよいでしょう。

3.被害者への電話等の禁止
 被害者の申立により、接近禁止命令を発する裁判所は電話等の禁止を命じることができます。また、電話だけでなく、メールやFAXも禁止とすることも可能です。

4.子への接近禁止
 相手方が申立人と同居する子の身辺につきまとったり,学校など通常いる場所の付近を徘徊することを禁止する命令です。

5.親族等への接近禁止
 相手方が申立人の親族その他申立人と社会生活において密接な関係を有する者の身辺につきまとったり、勤務先等の付近をはいかいすることを禁止する命令です。

 3.4.5の禁止命令は、1の接近禁止命令と同時か、接近禁止命令が既に出ている場合のみ申し立てることができます。当初申し立てなかったものを、接近禁止命令の期間中に追加することも可能です。

 保護命令違反があった場合、被害者は警察に通報し、保護を求めることになります。保護命令は相手方に心理的に圧迫をかけ、被害者に近づかないようにするものです。残念ながら保護命令が出たからといって、身の安全が必ず確保されるわけではありません。
 なお、加害者が夫でも内縁の夫でも元の夫でもない場合(恋人など)には、ストーカー規正法で対応することになります。



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